イサムノグチが手がけた『光の彫刻AKARI』
イサムノグチの名作「AKARI」シリーズは、60年経た現在に至ってもなお、多くの人々に愛され続けています。それは日本のみならず、海外でも同様。
温かみのある穏やかな光を放つ「AKARI」は、和のお部屋だけではなく、モダンや北欧など、どんなテイストのお部屋にも合わせやすい照明なので、どの照明にしようか悩んでる方はます「AKARI」を選択すること間違いなしです。
目次
1.イサム・ノグチを知ろう
2.AKARIが誕生するまで
3.AKARIへの想い
4.AKARIの持つ美しさ
5.AKARIの作品
6.まとめ
イサム・ノグチを知ろう
幼少期〜19歳頃
ノグチ・イサムは1904年11月17日に、日本人の父(野口米次郎)とアメリカ人の母(レオニー・ギルモア)の間に米国ロサンゼルスで産まれました。日本に渡り、横浜のインターナショナルスクールにアメリカ人としてイサムを入学させることにしたそうです。その時の名前は『イサム・ギルモア』になります。
高校を卒業したのち、イサムは医学の道に進むため、コロンビア大学へ進学をします。その大学でイサムは「野口英世」に出会いました。イサムは英世から「君の父、野口米次郎は素晴らしい作家だ」と聞き、初めて自分の父親が当時世界で最も有名な日本人作家ということを知りました。
父親の話を聞いた後、イサムはコロンビア大学を退学し、代わりにレオナルド・ダ・ヴィンチ美術学校に入学しました。この時、彼は今まで名乗っていた『イサム・ギルモア』から『イサム・ノグチ』に名前を変更しました。
この名前の変更は、父親への尊敬と憧れから生まれたものであり、ここから芸術家としての新たな一歩を踏み出すことになりました。そしてこの年、芸術家としての「イサム・ノグチ」が誕生することとなりました。
20代〜現在
20代に入ってからは、彫刻家であるコンスタンティン・ブランクーシの影響を強く受け、生涯をかけて抽象のフォルムが生み出す世界を追い求めていくようになりました。
また、イサムは憧れの父に会うために日本へ帰国しました。最初は拒否していた父米次郎でしたが、イサムの強い想いを知り、イサムに会うことを決意しました。2人が会った時には約20年の空白がなかったように打ち解け、仲良く連れ添っていました。
しかし、そんな幸せな時間もすぐに終わりが来てしまいました。戦争が始まり、アメリカ人が日本に入れるような環境ではなかったのです。終戦した時、イサムは父の安否を確認するために日本に手紙を送りました。しかし、米次郎は亡くなっていました。
終戦から5年後、イサムは再び来日しました。日本では彫刻だけではなく、庭園づくりなど総合芸術家として日本でもその名を広めていきました。
戦争によって、両親の祖国が互いに敵国になるという苦しい経験をしており、平和への強い願いを込めた作品も残しています。
AKARIが誕生するまで
「レオナルド・ダ・ヴィンチ美術学校」の彫刻クラスに通いはじめてから、彫刻家としてのキャリアを積み上げた彼は、1949年、ボーリンゲン財団奨学金を得て、世界中を旅することにします。そして、2年にわたる旅で最後に訪れた場所が、母親と暮らしていた日本だったのです。
1951年6月、広島での仕事へ向かう途中、長良川の鵜飼を見物するために岐阜へ立ち寄ったイサムは、岐阜提灯に魅了されます。
提灯の制作工程や材料を理解したノグチは、さっそく次の日の晩には二つの新しい提灯のデザインを行った後、アメリカへ一時帰国しました。岐阜から4点の試作品が届けられ、その出来栄えに満足したノグチは、その年の10月にも岐阜へ行き提灯の試作品の制作を行いました。
楕円形や円筒形、卵を半分に切ったような形など、15種類ほどの変形提灯を制作し、スタンドや金具の構造などにも工夫を重ねていった。
そして、小さく折りたたんでコンパクトに収納できるという、提灯本来の特徴を持ったワイヤースタンドによる組み立て式の小さい『AKARI』を完成させました。
ノグチは伝統的な提灯製造の技術にのっとり、さまざまな形の『AKARI』を作り出す一方で、竹ヒゴが生み出す線や和紙が生み出す陰影を効果的に見せようとする『AKARI』を作り出していきました。その数なんと35年をかけて、200種類以上に及びます。
イサム・ノグチは、『AKARI』を住空間に持ち込むことのできる「光の彫刻」と考えていました。単なる照明器具として制作に取り組んでいたのではなかったからこそ、ここまでバリエーション豊かに展開していくことになったのでしょう。
AKARIへの想い
イサムは幼少期、アメリカでも日本でもひどいいじめに合ってます。
そんな孤独で傷ついた心を癒してくれたのは『日本の優美な自然』だったそうです。自然の中に自分の興味を引くものを探し求め、芸術を通して自分を表現し始めていきました。
AKARIの持つ美しさ
『AKARI』美しさは、明かりをつけた時優しく温かい光が和紙を通して部屋全体を包み込んでくれます。
それだけではなく、明かりをつけていない時でさえ、可愛らしいフォルムがその存在感を漂わせ、そこにあるだけで空間をおしゃれに演出してくれます。
また、AKARIシリーズは遊び心のあるデザインが豊富なため、より愛着が湧き心が温まる感覚があります。かしこまりすぎていなくて、どことなく抜け感を感じるところがいいですよね。
AKARIの作品
グッドデザイン賞も受賞した吊り下げタイプ
置き型のスタンドタイプでインテリアにこだわる
まとめ
和紙を通してやわらかく光る「AKARI」は、ノグチが抱えている孤独を癒した、障子越しの「月明り」を再現したものといわれています。
ノグチは、『AKARI』を通して自分の心を癒し、また同じように孤独を感じている人々の心も癒したいと考えていたのかもしれませんね。
誰かの役に立ちたい一心で作り上げた作品は、今なお世界各国で愛され続けている存在となります。そんな温かみに包まれたAKARIを灯して、大切な時間を過ごしてみてはいかがでしょうか!